- 弁護士神尾尊礼
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Wizballの回答補足①~交際相手の浮気や暴力で離婚する場合
2018/10/17
LINEのQ&Aサービス「Wizball」の認定専門家(弁護士)として、「法律相談」カテゴリーの回答者をしています。
ブログでは、この回答の中からピックアップして補足していきます。
本日のピックアップは「交際相手の浮気・暴力で離婚する場合」です。
https://wizball.io/questions/26058
請求できるものは、上記リンクにも掲げたもののとおり、身分的なもの、金銭的なもの、公的なものに分けられます。
補足すべきは、「ではどのように対応するのか」。
弁護士業界では、DV案件はなかなか骨の折れるものとみられています。
そこで、各弁護士会でDV専門の相談者を用意することが多く、私もDV専門相談の1人です。
対応としては、保護命令などの法的なテクニックもさることながら、いかに物理的に保護するかという事実上のテクニックが要求されます。
住所の扱い、お子さんの学校の扱い、、、1つ1つ大変気を遣います。
気を遣うからこそ、専門相談枠を設けていますし、対応できる弁護士も限られています。
いくつか悩ましい問題が多いですが、「いっぱい話したいことがあるのに、束縛されて長い時間外出できない」と言われるときはかなり多く、初回相談からして問題山積の事案も多いです。
離婚した方が良いか、このまま一緒にいて良いのか迷ったらご相談ください。
解決方法を探っていきましょう。
法律解説~安室さんは紳士!
2018/06/01
映画名探偵コナン「ゼロの執行人」の話題第2弾です。今回も真相のネタバレ要素はありません。
大人気安室透さんが、被疑者に対して面会室で面会しているシーンがあります。
アレレ、警察官だから取調室ではないのかな・・・と疑問に持たれた方もいらっしゃるのでは。
もちろんキャリア安室さんは司法警察員ですので、取調べ権限があります。
取調室を使おうと思えば使えるはずです。
ところが、なぜかアクリル板越しの面会室を選んでいます。
私は、これを安室さんなりの被疑者に対する敬意だと考えています。
警察官も、一般市民の1人です。普通の人と同じように、面会室で面会(一般面会と言います)をすることができます。
では、なぜ取調べではなく一般面会を選んだか。
法律上、一般面会は弁護人接見とは異なり、立会人(警察官)がいます(刑事施設収容法116条)。これは警察官が一般面会をする場合でも変わりません。
被疑者との会話も聞かれてしまいます。秘密の会話はしにくくなります。
外部に漏れる危険を冒してまで一般面会をした理由は、安室さんの気持ち以外に理由は見当たりません。
安室さんは、被疑者に対して敬意をもっており、犯罪者扱いとほぼイコールの取調べという形式を採りたくなったのではないか、と考えるのが彼らしいと思います。
立会人に秘密の会話を聞かれてもなお被疑者の尊厳を考えた。男気ゆえの行動だろうと思います。
ちなみに、取調べをすると調書を取らなければならない、被疑者と何を話したか公になってしまうという説も聞きましたが、これはあり得ません。
取調べをして調書を作成しないことはいくらでもありますし、被疑事実が〇〇でしたので、録音録画もありません。
もちろん、身分を隠したくて一般面会をした、という可能性もゼロではありませんが、
彼は(よほど国家に危険が及ばない限りは)正々堂々振る舞うことを信条にしている節があり、やはり紳士的な行動だったのではないかと考える方が彼らしいかなと思っています。
結論としては、カッコよかった、ということに尽きます。
用語解説~「公判前整理手続」とは(コナンの世界は違う刑事訴訟法が適用されている!)
2018/05/15
映画名探偵コナン「ゼロの執行人」で、公判前整理手続という単語が出てきましたね。
世界有数の犯罪都市である米花町は、この日本とは別の刑事訴訟法が使われているようですので、本来の意味での公判前整理手続や違いについて説明します(以下、真相につながるようなネタバレはありません!)。
刑事事件の流れのおさらい
まず簡単に、刑事事件の流れをご説明します。
事件が起きると、警察・検察が「捜査」をします。
犯人とされる人は容疑者(法律用語では被疑者)と呼ばれています。
警察が記録等を検察に送ることを、「送検」と呼んでいます。書類だけ送るのを「書類送検」、身柄も一緒に送るのを単に「送検」と呼んでいます(マスコミ用語)。
送検されたら検察官もいろいろと捜査し、「起訴」をします。
起訴とは、裁判所に対して、「この人が犯人っぽいので裁いてくれ」と意思表示をすることです。
受けた裁判所は、裁判(公判といいます)を開き、有罪か無罪かを決めていきます。
日本における公判前整理手続
公判「ぜん」整理手続と呼んでいます。
これは、起訴されてから裁判までの間に、証拠等を整理する手続です。
この段階で、弁護人は初めて証拠を目にすることができます。
被告人にも立ち会う権利があるので、通常の法廷で(つまり、検察官と弁護人がいて、裁判官(たち)は法壇の上にいます)行います。
ただし、あくまで整理する手続であって本番ではないので、非公開で行われます。
コナンの世界での「公判前整理手続」
公判「まえ」整理手続と呼んでいましたね。
また、起訴される前に、裁判官室で弁護人と検察官が呼ばれ(しかも立たされて)、証拠の整理などをしていました。
弁護人にとってシビアだなと思ったのは以下の点。
・起訴される前に公判「まえ」整理手続はスタートするようだ。身柄解放に向けて争おうにも整理手続がスタートしてしまうとなかなか厳しい戦いになりそう
・起訴される前に裁判官が事件の内容をかなり把握できるようだ。さすが犯罪都市、事件が多いのだろう。ただ、予断を与えてしまいかねず、否認事件だとかなり厳しそう
・裁判官室で立たされる。これは腰痛持ちの弁護士には厳しそう
・裁判室で行うのは、事件が多すぎて法廷が取れないからなのだろう。ただ、被告人(まだ起訴されていないので「被疑者」)は出頭できそうになく、参加する権利はなさそう
他方、弁護人にとって有利だと思ったのは以下の点。
・起訴前に記録が読める!これは大きい。起訴後だと証拠自体消滅していることもあり(例えば防犯カメラ)、弁護しやすくなりそう
・準備が大変になる分、雀の涙ほどの報酬がカラスの涙くらいにはなりそうかな・・・(米花町の事件数を考えると無理か)
あとは、弁護人の選任の仕方など、ツッコミどころはいっぱいありましたが、次回以降に続きます。
労災に関するインタビューを受けての雑感
2017/08/31
労災に関するインタビューを受け、以下のような回答をしました。
https://www.mamoru-kun.com/tips/workers-accident-trouble/
主に使用者側の立場からのものになります。
ただ、これは労働者側からみても大事なことで、
「自分の労働環境を客観的にみて安全か」という視点は大切なことです。
長時間労働下でのバス事故、過労死などが社会問題化しているところです。
弁護士としても、あと一歩早く相談に来てくれたらと思うこともしばしばです。
「疑わしきは被告人の利益に」の意味
2017/06/30
弁護士の神尾です。
先日、担当していた裁判員裁判で、一部無罪判決が出ました。
判決を聞いていて、「疑わしきは被告人の利益に」という大原則を考えさせられました。
「疑わしきは被告人の利益に」(「疑わしきは罰せず」ともいいます)とは、検察官が立証に失敗した場合、被告人に有利に認定する(例えば有罪の立証ができなければ無罪にする)というものです。
これは、人類の叡智と言われています。
古くは魔女裁判のように、「疑わしい」だけで無実の人が罪に問われてきました。そうした歴史から学んだ、冤罪から身を守るための大事な原則です。
判決は、この原則に忠実なものでした。
同じ裁判は二度できないので、これが裁判員裁判だから無罪になったのか、裁判官だけの裁判だったら結果が違ったのか、誰にも分かりません。
ただ、少なくとも今回の裁判員裁判では、「疑わしきは被告人の利益に」という原則が目に見える形で実現されていると感じました。また、裁判員の中で意見が活発に交わされたのではないかとも感じました。
裁判員裁判の存在意義について議論されていますが、裁判員裁判を二桁担当してきた弁護士からみると、やはり必要な制度だろうと思います(改善の余地もありますが、それは別稿で)。
法律上、私はもう一生裁判員になることができず、一度はやってみたかったなあと思います(弁護士は辞めても裁判員になれないのです)。
「てるみくらぶ」の破産、そして弁済申請とは?お金は帰ってくるの?
2017/03/30
宴会が続いてお金を使い過ぎ、「今月このまま行ったら破産だよ」と冗談を言ったことはあると思います。
ただ、実際に破産しようとすると、やれ財産目録を作ったり、やれ債権者一覧を作ったりと、なかなか骨が折れます。そして、お金を貸していた人も返してもらえなくなり、みんなに迷惑をかけるときもあります。
今回問題になっているのは「てるみくらぶ」。旅行業に限らず、一般消費者向けに大々的にやっている企業が潰れると影響が非常に大きい場合があります。
破産申立てももちろんしますが、裁判所から選ばれて管財人となって破産者の財産状況の調査や債権者への対応もします。
ついついこうしたニュースをみると、管財人だったらこうするよな、債権者にどう説明しようかな、という視点でみてしまいます。
そして、みなさんが最も心配だろうと思うのは、「自分が払った旅行代金は返ってくるのか」ということだろうと思います。
管財人的には、破産者の持っている財産をお金に換え、回収できるものは回収し、債権者に配当することを考えます。
ただ、換価や回収はすぐにできませんし、配当率は数%に過ぎない(むしろ配当なしの方が圧倒的に多い)という残念な事情があります。
そこで、他の手段で確保できないかを検討します。
旅行業というように、「業」が付くものはだいたい「業法」という、所管する法律があります。
今回だと旅行業法ですね。
そして、業法があるものには、これまた「弁済業務保証金」という制度があります。
これは、要は、「何かあったらそこから払うよう、あらかじめ納めておくお金」です。
今回がその「何かあったら」の場合に当たりますので、お金を取り戻したいという方々は、この保証金から弁済を受けられる可能性がある、ということになります。
そして、この保証金は(供託とか難しい話もありますが要は)業界団体である「日本旅行業協会」が管理していますので、この協会に申し出ることになります(ニュースなどでは「弁済申請」と表現していますね)。
これまたややこしいので省略しますが、一定期間中に申し出があり確かに支払うべき人だとなったら、保証金を山分けします。
ただ、今回は明らかに申請される額がとんでもないことになりそうなので、満額分配されることはまずなく、一部が返ってくることになるでしょう。
とりあえず、協会にアクセスするのをおススメします。
なお、この弁済業務保証金は、先に述べたとおり様々な業種で用意されていますので、「取引先が倒産した」「払ったお金が返ってこない」という場合には、調べてみるとよいでしょう。
官報による公告だったりするので、非常に分かりにくいです。相談いただければ対応もします。
最後は泣き寝入りの部分も出てきそうですが、いくらかでも被害が回復することを祈念しています。
弁護士の交通事故バイブル赤本は、今年から桃本です
2017/03/23
ご無沙汰しております。年度末は裁判所等からの「宿題」に明け暮れ、多忙を極めつつあります(実際は確定申告の影響が多分に。自業自得です)。
さて、弁護士の交通事故処理に欠かせないバイブルが、「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」なる本、通称「赤本」です。
その名の由来は、何のひねりもありません。見た目が真っ赤だからです。
大学受験でも使わなかった赤本を、社会人になってから使うことになろうとは。
私は発行日に受け取れるよう手配しており、今年も届いたその日にこれを見て起案したり説明したりしていました。
ただ、今年からその「赤さ」が若干影を潜め(?)、ピンクになっています。
「ピンク本」というのは何となく危険な香りがしてしまうので、勝手に「桃本」と呼んでいます。
交通事故はおそらくなくならないでしょう。
せめて被害に遭われた方が迅速公平に被害回復できるよう、今日も桃本を活用中です。
ニュース番組に出演してきました.
2016/12/15
12日、インターネットテレビ局AbemaTVのニュース番組、
「大人の事情をスルーしまくる」ことで有名なAbemaPrimeの冒頭20分ほど出演いたしました。
知らなったのですが、スタジオ自体はテレビ朝日内にあるのですね。
六本木はライトアップされていて、とても奇麗でした。
テーマが嘱託殺人ということで、法律と感情と人生が入り混じる、難しいテーマでした。
メインはウーマンラッシュアワーの村本さん。
村本さんはとても真面目な方で、鋭い質問が多く、こちらも回答しながら考えさせられる場面もありました。
(問答はほぼぶっつけです)
生放送は初めてだったので緊張するかと思いきや、出演者の皆様のトークに聞き入ったり質問に対して頭をフル回転させたりしているうち、
緊張する暇もなくあっという間に時間となりました。
https://abematimes.com/posts/1772973?categoryIds=70273
まとめ記事と著作権(当事務所の方針)
2016/12/14
社会問題化している「まとめサイト(まとめ記事)」。
必要な情報がコンパクトにまとまっているというのは、時に有用だろうと思います。
私も、「冠婚葬祭のマナー」など、日常のちょっとしたことにとっかかりとして利用することがあります。
昨今、大手サイトで、こうしたまとめサイト(記事)を閉鎖するところが増えてきました。
信頼性や正確性の問題ももちろんですが、そこには法的な問題はないのでしょうか。
ぱっと思いつくのが著作権法に反するか否かです。
著作物であっても適切な「引用」に当たれば問題はないのですが、まとめサイトの「引用」の仕方は著作権法上認められる「引用」に当たらない可能性があると考えています。
著作権法上の「引用」については、いくつかの条件がありますが、近年は著作権者に対する影響の程度等をみていく傾向にあります。
現在のまとめサイトの報道状況をみるに、著作権者として「引用」されることを望まない(引用されることを良しとしない)人が増えているのではないでしょうか。
他の要素等もみていくと、適切な「引用」に当たるケースはそれほど多くないと思います。
そうであるなら、原則に戻って、著作権者に一言あるべきと考えています
(白か黒かはっきりしないのなら、コンプライアンス上安全な方を採るのは法律家としては当然の発想です)。
私のインタビュー記事等がまとめられているケースがあり、これらは私の著作物ではなさそうなので別に何も言うつもりもありませんが、
当事務所HPやブログからの転載については、原則として一言お願いいたします
(HPに問合せフォームがあるので、そこに一言お書きください)。
一言があれば、前述のとおり誰かにとって有用だろうと思いますので、原則として転載を許可しますが、
無断転載の場合は削除等の方法を採らせていただくことがあるだろうと思います。
私個人としては、情報を発信することはすなわち利用していただくことだと考えていますので、それほどうるさく言うつもりはありません。
ただ、内容が法律問題という生活に直結しかねない問題であるだけに、私の手から離れた利用(特に私の意図していない形での利用)には、慎重にみていかないといけないと思っています。
ニホンゴの難しさ~弁護士からみて 第1回「させていただきます」
2016/09/26
弁護士は、日々日本語に悪戦苦闘しています。その使う1行1文字で裁判の勝敗が決まると言っても、、、これはカゴンでした。
ただ、行政文書や「それなりに」正確な文書を日々見書きする立場として、語法やニュアンスを含め、気を遣っています(このブログ等のように非公式なときには全く気にしていませんが、それはご容赦を)。
弁護士として日常的にあるのが、電話対応。会社さんに電話をすると、
「本日、社長はお休みさせていただいております」
と対応されることもしばしば(たぶん居留守です)。
でも、この「させていただきます」には、なんだか違和感あり。
調べてみると、①相手方等の許可を受けて、②そのことで恩恵を受ける場合などに使うとされています(文化庁の答申)。
私は別に社長に休みを許可したわけではないので、「させていただいております」と言われてもねえ、という印象です。
ただ、悪い印象はありません。むしろ、電話口で「僕なら休みにしておいて」という声が聞こえる方が、、、
もっとも、気にする方は気にするという噂ですので、過剰な敬語にはご注意を。