認知や離婚を隠す方法~移記の魔力

2014/08/01

弁護士の神尾です。

 

バツイチを隠したい、切実な願いです。相続絡みでいうと、認知したことを妻にばれたくない、という文脈で出てきます。

戸籍に書かれちゃう事項を、隠すなんてできるのでしょうか。

 

魔法の移記

戸籍は、転籍(本籍を移すことです)をすると、新しく戸籍が作られます。このとき、実は、全ての記載事項が新戸籍に引き継がれるわけではないのです。つまり、いくつかの事項が、転籍によって消えてしまうのです。

この記載事項を引き継ぐことを移記といい、移記されないものは消えていくということになります。

 

では、どのような事項が引き継がれるのでしょうか。

 

戸籍法施行規則39条1項2号は、引き継ぐものとして、以下のものを定めています。

「嫡出でない子について、認知に関する事項」

 

つまり、認知された子の側の戸籍については、「認知されたよ」という記載は移記される、すなわち消えないことになります。

 

逆に、認知した親の側の戸籍については、「認知したよ」という記載は移記されない、すなわち消えてしまうということになります。

 

あらまあ、何と魔法のような制度でしょう。

 

魔法はいつか解ける、それも死後に

ただ、この魔法は表面的なものなのです。記載が引き継がれないというだけで、旧戸籍には依然として書かれ続けます。

だから、例えば旧戸籍を取り寄せると、ばっちり認知が出てきてしまいます。

 

旧戸籍を取り寄せる状況、これはどのようなときでしょう。弁護士業界としてよくみるのは、そう、相続のときです。

奥さんが住んでいた家を登記するために遺産分割協議が必要になって、そのときに相続人の確定が必要になって、旧戸籍を取り寄せるとそこには・・・

なんて展開です。

 

魔法はいつか解けるもの。

一時的な魔力に惹かれても、そのしっぺ返しは死後に訪れます。