離婚事件その2~年金分割に強い?弱い?
2014/07/01
弁護士の神尾です。
離婚の際にちょっと問題になる「年金分割」という制度をご存知ですか。この制度を日々相手にしていると、はたして「年金分割に強い」方なぞいるのか、と疑問に持ちます。
年金分割とは?
まず、年金分割という制度について、簡単に説明します。
ものすごく簡単に言うと、「結婚していた期間の厚生年金・共済年金の納付分を分けてもらう」というものです。
例えば夫が会社員、妻が専業主婦だった場合、老後に夫だけ厚生年金をもらえ、妻が国民年金しかもらえない、というのは不公平です。だって、夫を会社に送り出すために日々がんばっていたのは奥さんだから。厚生年金を納めたのは、いうなれば夫婦の共同作業だと考えて、妻の年金にもちょっと上乗せしましょうという制度、これが年金分割です。
年金分割には合意分割と3号分割がある
年金分割は、結婚した時期に合わせて、2つの分け方があります(本当はもう少し様々な条件がありますが、今後のことということで、細かいところを割愛しています)。
1つは、合意分割。その名のとおり、分割割合を双方が合意して決めることです。平成20年4月より前から結婚している場合には、合意分割を使うことになります。
もう1つは、3号分割。平成20年4月以降については、合意がなくても半分ずつに分割する、という制度です。
弁護士の力量が試されるのは
3号分割は、何もしなくても半分になります。ですので、合意分割のときに、分割割合をどうするかという問題になります。
「だったら、少しでも自分に有利なように分割割合を決めていきたい、そのためには弁護士を・・・」と話が進めば、弁護士としても仕事が増えてよいのですが、実際はそううまいこと行きません。
なぜなら、こじれて調停等に進んだ場合、裁判所はほぼ間違いなく半分に分けると言い出すからです。
半分以外の案を提示されたこともありませんし、半分以外になったこともありません。
したがって、私としては、「年金分割に強い」というのはありえず、誰がやっても半分になるはずである、と考えています。
むしろ、離婚はトータルでの条件勝負ですから、年金分割以外の条件、例えば養育費や財産分与、慰謝料といったところに力を注ぐべきだろうと思います。
私としては、「年金分割に強い」とおっしゃる方がいらっしゃるのであれば、むしろ教えを乞いたいぐらいです。
私は他の条件で少しでも良いものが引き出せるよう、日々精進しています(教えを乞いたいと言いながら、こちらは企業秘密です!)。