法律とスポーツは似ている~スポーツのルールを法律家が読み解く(その1)
2015/06/16
スポーツのルール(レギュレーション)は、あらゆる場面を想定して作られています。
非常に細かい場合分け、優先順位の決め方などなど、法律の解釈に似ています。
そんなわけで、スポーツのルールを法律家が読み解いてみようと思います。法律論における解釈プロセスの習得にはうってつけです。
第1弾は、「女子ワールドサッカー2015の決勝トーナメント1回戦の相手は?」です。
なでしこのがんばりでグループリーグは突破しました。
しかし、巷のマスコミにも、決勝トーナメントがどうなるのか正確に報道しているところは少ないようです。
そこで、レギュレーションを解釈してみましょう。
ずばり、「なでしこ1位突破の場合の対戦相手はどこになるのか?」です。
報道では、C組(日本所属)1位は、「グループAかBかFの3位」と当たることになっています。
なんとアバウトな・・・というわけではなく、きちんとルールが決まっています。
FIFAのレギュレーションをみてみましょう。
から引用
28-2(抜粋)
The following table indicates the pairings in the round of 16, depending upon which third-placed teams qualify from the group stage.
(私の日本語訳)次の表は、ラウンド16の組合せを表しています。
1C plays against:
A B C D 3A
A B C E 3B
A B C F 3B
A B D E 3B
A B D F 3B
A B E F 3B
A C D E 3A
A C D F 3A
A C E F 3F
A D E F 3F
B C D E 3B
B C D F 3B
B C E F 3B
B D E F 3B
C D E F 3F
(超訳)上位4チームがABCD組から出た場合はA組3位と、ABCEならB組3位と、(以下省略)C組1位は当たることになります。
では、「上位4チーム」というのは、どうやって決めるのでしょう。
27-7
The four best teams among those ranked third will be determined as follows:
a) greater number of points obtained in all group matches;
b) goal difference resulting from all group matches;
c) greater number of goals scored in all group matches;
d) drawing of lots by the FIFA Organising Committee.
(超訳)3位の中での上位は、1勝ち点、2得失点差、3総得点、4くじ引きで決めます。
「3位」というのは、27-6に規定がありますが、細かすぎるので引用を省きます(1勝ち点、2得失点差、3総得点、4当該チーム間の勝ち点、5当該チーム間の得失点差、6当該チーム間の総得点、7くじ引きの順です)。
そんなわけで、現状(6月16日日本時間15時時点)での順位をみてみます。
A組3位(3試合終了) オランダ 勝ち点4 得失点差0 総得点2
B組3位(3試合終了) タイ 勝ち点3 得失点差-7 総得点3
C組~F組は2試合のみ終了なので確定していませんが、
C組→2位3位の直接対決。3位でも得失点差が+5あるので、タイより上に行く可能性大
D組→2位3位の直接対決。3位の勝ち点が2なので、タイより上に行くか下に行くかは不明
E組→D組に近い
F組→C組に近い
という状況です。
あとは確率論の問題になります。
タイが厳しいとみるならば、上の表からみて、A組3位かF組3位しかあり得ないことになります。
こんな風に、順位を決める場合などには、
直接的に適用されるルールはこれ→そのルールを判断するために必要なルールはこれ→・・・→最後には現実に起こったことにルールを当てはめる
という流れで考えていきます。
次回はもう少し試合が消化されてから振り返るか、別のスポーツのルールについてみていきたいと思います。